サホロリゾート拡張計画

                                                      1991 年 7 月 18 日

     北海道知事 様
                  〒081 北海道上川郡新得町字新内西1線125
                         芳賀 耕一(農業・35才)
                         01566-4-6893

         環境影響評価書に対する意見書

 次の特定開発事業に係わる環境影響評価書に関し意見書を提出します。

   1.特定開発事業の名称 狩勝高原サホロリゾート開発事業

   2.意見の内容


● まずは自己紹介

 私は19才まで東京で暮らしていましたが、「食うためには仕方がない」と自分に言
い訳しながら長い物にまかれて行くのは我慢できず、「じゃあ、食うものを作ろう」
と考えて北海道に来ました。新得・本別の農家で3年間の実習後、現在の土地に入植
して14年目となりました。農薬を使わない野菜作り・平飼い養鶏で、経済的には決し
て楽とは言えませんが、街の人々に食べ物を手渡すことを楽しみに何とか暮らしてい
ます。たぶん佐幌岳の最も近くで暮らす農家だと思います。

● えっ、農林業の町・新得がリゾートの町になる!!

 ご存じのように日本は農業を犠牲にすることにより急速に工業化社会を発展させ、
その経済力で他国の自然環境・生活環境まで破壊していますね。アジアの国々は日本
にバナナやエビや木材を輸出するようになりましたが、それでアジアの人々の暮しが
豊かになったと言えますか。
 林業の事はよくわからないのですが、日本の国有林はコスト優先の略奪型林業によ
り再生産ができなくなっていると聞きました。日本は世界の森林を破壊しながら、自
国の林業も駄目にしているのですね。
 真の国際化社会を目指すこと、これ以上の環境破壊をしないためには、まず自国の
農林業を守っていくための地道な努力が必要でしょう。農業や林業が日本国経済の中
で虐待されているからといって、新得町が小金持ちになって浮かれている都会人相手
の観光商売に活路を見いだそうと言うのでは、農林業の衰退は避けられません。
 土から離れた都会に暮らす人々も豊かな自然の中での暮しを体験したら素晴らしい
と思います。でも頂上までリフトが運んでくれるゲレンデスキーや、虫も住めないよ
うなゴルフ場で遊ぶことからは、自然環境と調和した暮しを作りだそうという力は涌
いてこないでしょう。
 スキー場やゴルフ場が無ければ都会人が訪れないからと、自然を破壊してスキー場
やゴルフ場を作るのは非常に貧しい発想です。とても『特色豊かなリゾートエリア』
とは言えないでしょう。私達・新得町民は豊かな自然と調和した農業・林業を育てて
いきましょう。しっかりした生産基盤の中から、工芸や芸術など真の文化が生まれる
ことでしょう。生活様式そのものが文化だと言った方がいいかも知れません。
 新得町が農林業の町として、生産の場を都会に暮らす人々に伝えるために宿泊設備
を持つというのであれば賛成です。生産者と街の人々とが共感できる場を作り、新得
町の農業を活気のあるものにしていけたらと思います。また訪れる都会の人々にはス
キー場やゴルフ場ではなく真の自然を知ってもらいたい。できれば、日々の暮しを見
直すきっかけとなるような体験をして帰って欲しいものです。
 ついでに書くと、スキー場・ゴルフ場主体の観光はこれから魅力を失い未来は無い
だろうと言うのが私の希望的観測です。

● 環境アセスメントって何ですか

 佐幌岳の観光開発については前々から嫌だと思っていたのですが、発言する機会も
無く実状もわからないまま今回のアセスメントを迎えました。町民として初めて公的
な意見を求められたので、ちょっとは真面目に考えてみました。でも時間があまりな
くて不充分な事しか書けません。資料もほとんどありませんから、誤りもあるでしょ
う。第一、環境アセスメントの意義について、ほとんど理解できていません。わから
ない事だらけの環境影響評価書です。新得町民にとって重大な問題ですので、町民み
んなが考えられるだけの充分な時間を頂きたいと思います。

● 環境影響評価書の縦覧方法について

 新得町役場で期間内に縦覧した人は私を含めて6人です。環境影響評価書はその厚
さと内容で素人を威圧するには充分ですが、持ち出しを許可してもらえなかったため
コピーも出来ず短い時間では理解することが不可能でした。やっと最終日にコピーさ
せてもらえたので、何回も読み返して少しは内容がわかりました。これからのアセス
メントについて縦覧方法の検討をお願いします。

● 地元への経済波及効果について

 こちらの無関心に問題があるのでしょうが、現在までの観光開発は町民不在のまま
行政側の強力な推進によりここまで来てしまいました。町民の多くは、観光開発を進
めた場合、新得町がどのようになって行くのか想像が出来ず、賛成とも反対とも言い
かねています。ただ実感しているのは「あれだけの観光施設が出来ても地元の暮しは
ほとんど豊かになっていない」という事でしょう。
 新得町側は「しんとく広報」を使ってサホロリゾートの地元への経済波及効果につ
いて宣伝しましたが、町民の不満は「これだけの金が動くのに、なぜ地元利益が出な
いのか」という事です。地元収入は多くても所得につながらない。要するに極端な低
マージンによりお金は素通りするだけです。雇用の場としての意義はあるのかも知れ
ませんが、人手不足の新得町では必ずしも喜ばれていないようです。

● 『地元の積極的な協力を得て』(p.37)

 確かに、新得町が株式会社・サホロリゾートのために投資した金額は莫大です。新
得町はサホロリゾートからこの5年間に町税として4億2千万円の収入があったそう
ですが、 5億6千万円の総合体育館を始め水道・道路工事費など15億8千万円の支出
を計画していると聞くと、町民として非常に不満のある町財政です。
 セゾングループなどは行政を非常にうまく利用しながら多大な利益を上げ、これだ
けの大企業になったのでしょう。一企業の利益のために協力を惜しまない新得行政に
対しては情けないとしか言いようがありません。
 「しんとく広報」によると『農家一戸当たりの農業関係総体の投資額を比べると、
新得町が314万円でトップ』だそうで、 新得町は観光だけでなく農業に対しても『町
の財政も応援』と強調しています。その中の大きなものに農道空港(総工費5億円)
があります。ところが「輸送コストが高くて経済的に引き合わないだろう。本当の目
的は観光利用だろう」というのが、多くの町民が考えていることです。数年後には真
実が明らかになるでしょうが、本当に農民が望むことに投資して頂きたいものです。

● 廃棄物処理計画について

 私達の暮しの中で、廃棄物の問題は最も真剣に考えなくてはならない問題のひとつ
でしょう。 サホロリゾートは計画によると『年間入り込み者数約100万人』(p.37)と
の事ですが、どのように廃棄物を処理するのか環境影響評価書を見て愕然としました。
あれだけの分厚い評価書の中に『事業予定地域内で発生する廃棄物は「新得町じん芥
処理場」で処理され、残った不燃物は同処理場内にある埋立処分場にて処分される』
(p.68)としか記されていなかったからです。もちろん山で野焼きしたり埋め立てるこ
とを望んでいるのではありません。ゴミを減らすためにみんなが努力して、処理につ
いては処理コストを惜しんではならないのに、責任のすべてが新得町に押し付けられ
ている。こんなに重要な問題を無視しようとしている。
 現在でも新得町のゴミ処理は野焼き・埋立場新設など数多くの問題を抱えて未解決
なのに、大量の廃棄物を安易に引き受けてしまう行政では『地元の積極的な協力を得
て』と一企業を喜ばせるばかりです。
 廃棄物処理問題について真剣な計画の再提出を求めます。

● 不明確な伐採計画

 新得町民に配布されたパンフレット「環境影響評価書の概要」には『各種施設の造
成面積は、事業計画面積 2,200haに対し既存施設は約7%、新規造成面積は約23%で
あり、実に70%が豊かな植物相をもつ森林となるように保育、修景されます』と書か
れています。ところが環境影響評価書の土地利用計画概要(p.37)の方では『計画面積
2,200haのうち新規施設の敷地面積は約36.6%であり、 森林として保存する面積は約
56.3%の計画である。.…… また既存施設の敷地面積は約7.1%である』と記述に隔た
りがあります。
 サホロリゾート側の説明によると、敷地面積と造成面積の差違だとのことですが、
『森林として保存する面積は約56.3%の計画』が非常に気になります。今回のアセス
メントで、施設計画のない部分まで含む 2,200haという広大な面積が事業計画地域と
されていることは非常に不安ですが、その43.7%までの森林を破壊される恐れがある。
おまけに計画自体が流動的なのだと説明されると、このアセスメントの意義がわから
なくなります。
 とにかく新得町民に対して70%の森林を残すと説明したのですから、本文の方にも
明記することを要求します。そして道は責任を持って計画を守らせて頂きたい。

● 汚水処理について(p.62)

 放流水質の監視は誰がどのような形で行うのでしょうか? 放流水質は濃度で規制
するようですが、濃度規制は汚水を水で希釈することによって簡単にクリアできます。
現在でも河川水質は 『BODの75%値は環境基準値を満足していない地点も見られる』
(p.113)のですから、 濃度規制基準を満たせばいいとするのではなく、環境に対する
負荷をできるだけ少なくするよう努力を惜しまないで頂きたい。

● サホロ湖の水質汚濁について

 予測を見るとサホロ湖の富栄養化は避けられないようです。リン含量が4倍、窒素
含量が1.7倍になるというのは(p.150 表中 T-P 0.019mg/lは 0.041mg/l の誤り)、
見過ごせない問題だと思います。肥料を流出させない肥培管理・排水処理方法の改善
など、まだまだ工夫の余地があるでしょう。こちらは素人で具体的な提言は出来ませ
んが、もっと慎重な検討をお願いします。

● 農薬使用計画について(p.68)

 ゴルフ場の農薬使用による環境破壊が大きな社会問題となって、各地の周辺住民は
自分達の生活環境を守るために必死の努力を続けるようになりました。その成果が表
れ、今回のアセスメントも農薬使用に関してはそれなりの配慮をしたものにはなって
います。1990年には駐車場に除草剤の散布を行っていますが(p.259)、 今後は『農薬
の使用はゴルフ場内に限定し、スキー場やホテル、コンドミニアムの芝地等のエリア
では使用しない』(p.68)ことを約束しました。また1991年現在、魚毒性C類の農薬も
使用していますが、『使用する農薬は魚毒性がA類及びB類に限り、C類は使用しな
い』(p.68)と表明した事は評価に値します。それでは何故、現在もC類農薬の使用を
続けているのでしょうか。既存のゴルフ場は適用範囲外だとでも説明されるのでしょ
うか。一刻も早く、既存のゴルフ場から実践して行かなければ住民を説得する事は出
来ないでしょう。
 除草剤の使用はゼロではないものの、ティーグラウンド・フェアウェイへのスポッ
ト散布しか行わず、新規ゴルフ場36ホール当りで14リットルの使用に抑えるとの計画
です。殺虫剤の散布も50リットルと書いてあります。問題は、実際の農薬使用量が農
薬散布計画以内に収まるかについて、誰も責任を持たないことです。そんな計画には
まったく価値がないでしょう。環境アセスメントの存在価値まで問われます。だれが
どのような形でこの計画を守らせるのかはっきりさせて頂きたい。また既存のゴルフ
場については説明が一切されていませんが、既存ゴルフ場での農薬使用は新設ゴルフ
場より多いと聞きました。現存するゴルフ場に対して減農薬の努力がされていないの
であれば、この計画を信頼することは無理でしょう。
 また先日ゴルフ場を視察したところ、ゴルフ場の周辺部についても除草剤を使用し
ている様に見受けられましたが私の思い違いでしょうか。
 農薬散布量で最も使用量が多いのは殺菌剤となっています。ゴルフ場という非常に
不自然な環境を維持するために農薬はかかせないとの説明でした。「それならゴルフ
場は作るな」というのが私の本心ですが、日本各地では住民の努力により無農薬ゴル
フ場に取り組むゴルフ場が増えています。無農薬ゴルフ場を目指す事は経営上不利に
なるのかも知れません。サホロリゾートが実行しようとしないのは、私達住民が嘗め
られているからでしょうね。

● ゴルフ場排水計画について(p.69)

 防水シートの寿命は何年と考え、交換施工は何年間隔で行うのでしょうか。農薬で
汚染された土壌改良材や防水シートの処分方法はどうなりますか。
 新設するゴルフ場については排水管理を行うと書かれていますが、既存のゴルフ場
については記述がありません。既存ゴルフ場の排水計画についても明確にして頂きた
い。

● 『結果を見ながら吸着板を適宜交換する』(p.69)

 適宜というのは曖昧な表現ですね。農薬の検出値が規制値以下であれば交換しない
のでしょうか、規制値以下であっても周辺環境に与える影響を最小限にするために積
極的に交換するのか、具体的な交換の目安を示して頂きたい。また農薬の検査体制は
どのようになっているのか教えて頂きたい。
 また古い吸着板はどのような処分方法をとるのでしょうか?

● 豪雨時の農薬流出濃度の予測(p.155)について

 (参考)と断わっているだけあって、ずいぶんおかしな予測です。「30年確率の豪
雨で予測」と書かれていると、最も厳しい条件のように錯覚しますが実は正反対です。
雨量が多ければ多いほど農薬濃度は低くなります。 11月に100mmの豪雨が降り農薬が
100%流出すると仮定して同様の計算をすれば、 オキシン銅の農薬濃度は環境保全水
準を超えるでしょう。

● 農薬流出実験について(p.267-268)

 この環境影響評価書の中でも私がもっとも不信感を抱いたデータです。400mg/l の
農薬を含む水が、50cmの層を通過すると0.001mg/l以下となる。 これが本当なら素晴
らしい浄化装置です。でも農薬のすべてがテンポロンやゼオライトに吸着してしまっ
たら作物は農薬を吸収しないのではないか、 それでは折角(?)の農薬散布も意味をな
さないだろう、なんて心配までしてしまいます。
 もしかすると、新品の吸着材を使用すればこのような数値が得られるのかも知れま
せん。でも農薬散布毎に吸着材を交換する訳ではないでしょう。数年間使用するなら
その経年変化を調べるべきでしょう。また、テンポロンやゼオライトの農薬吸着能力
は施肥によっても減少する事でしょう。吸着した農薬だって簡単に分解するわけでは
ありません。そのような未知の事を調べ対策を講じていくのが実験の意義です。評価
書には数多くのデータが含まれていますが、有意義な実験は一つも見いだせません。
 『農薬の流亡率は.…現時点では明らかになっていない』(p.154)のにもかかわらず
こんな無意味な実験結果を提出するサホロリゾートに対し抗議します。
 実験結果に直接影響の無い部分ですが、表V-1-6最下段左の20,160分という計測結
果は実際には計測していないでたらめ数値でしょう。実験の信用性自体も疑います。
 公的研究機関による追試を強く要望します。

● 最後に

 締切の時間が来てしまいました。まだまだ書き足りないことで一杯ですし、もっと
調べたい事もたくさんあります。とりあえず今回は、これだけを意見ならびに質問と
して提出しますが、まだまだ未解決な問題が山積みしていることを配慮して、時間を
かけた審議をお願いして最後とします。引用したデータなどに誤りがみつかれば、追
加して送付したいのですが受け付けていただけるのでしょうか。

 以上、よろしくお願いします。

                                                      1991 年 8 月 23 日

    北海道知事 様
                                     〒081 北海道上川郡新得町字新内西1線125
                                                    芳賀 耕一(農業・36才)
                                                   01566-4-6893


        狩勝高原サホロリゾート開発事業に係わる
                    環境影響評価に関する公聴会の公述原稿提出について

● 公述原稿提出の理由

 この公聴会で私達が公述した意見は、北海道保健環境部環境調整課環境審査係によ
り要約され北海道環境影響評価審議会に提出されるとの事ですが、内容の切捨ては困
りますので、審議会に直接この公述原稿を提出します。また環境審査係に対しては、
他の公述人の意見についても要約しないで全内容を提出する事を要望します。

● 公聴会の意義について

 環境アセスメント(北海道環境影響評価条例)で住民が関与できるのは、説明会で
の質問・環境影響評価書に対する意見書の提出・公聴会での公述の3回だけですが、
意見書・公述については、不安や疑問に対する回答も無ければ、要望について住民と
協議する機会も一切ありません。ご覧の通り公聴会も私達住民が一方的に話すだけの
ものです。(意見書の提出が無ければ公聴会は開かれません。)
 住民からこれだけ不安や疑問が提出されているのですから、行政はきちんと回答し
てください。また住民からの要望を聴いて事業者に対してどのような指導を行ったか
連絡してください。私達が求めているのは非の打ちどころの無い立派な評価書ではあ
りませんから、評価書の修正で済まされると困ります。住民が納得できる回答を得ら
れないのであれば、事業の中止を求めます。

● 不明確な伐採計画について

 ここで伐採計画を例にとり評価書のいい加減さを明らかにしておきます。

 評価書には『森林として保存する面積は約56.3%』と書かれていますが、新得町民
に配布された「環境影響評価書の概要」では『70%が豊かな植物相をもつ森林となる』
と書き換えられています。

        『計画面積 2,200haのうち新規施設の敷地面積は約36.6%であり、
        森林として保存する面積は約56.3%の計画である。 ・・・・ また既存
        施設の敷地面積は約7.1%である』(p.37)
        『各種施設の造成面積は、事業計画面積 2,200haに対し既存施設は
        約7%、新規造成面積は約23%であり、実に70%が豊かな植物相を
        もつ森林となるように保育、修景されます』(概要)

 私がここで言いたいのは不整合性ではありません。評価書の虚構性です。評価書に
並ぶ虚構に満ちた数字を、整合性だけで審査するアセスメントには価値が無いと言っ
ているのです。

● 新得町財政の観光支出について

 サホロリゾートからの町税はこの5年間に4億2千万円ですが、その75%は地方交
付金を減額されるということなので、実質的な収入は1億1千万円になります。
 それに対し、町が過去10年間に支出した金額は体育館・テニスコートなど15億8千
万円で、補助金などを差し引いた町の実質的な負担は6億9千万円になるそうです。
その上、リゾート活用型という農道空港を始め計上されていない支出もあります。

        私が7月18日に提出した意見書に『15億8千万円の支出を計画』と
        書いたのは誤りでした。

 これだけ多額の支出でも、新得町民にとって価値ある投資と考えるかどうかは、そ
の人の置かれた立場もあり様々でしょう。でも、町民にとって非常に利用しにくい体
育館は町民のための公共施設とは言い難く、多くの町民が不満を持っているのは確か
です。明らかに事業者が負担すべき性格のものを町に負担させていることは、サホロ
リゾートが町民に歓迎されない大きな要因になっています。
 サホロリゾートは『周辺社会全体への経済的発展に寄与する』という大義名分を掲
げ、国や自治体財源を利用しながら事業を行っていますが、地元商工会からの買い入
れは低マージンの上、地元経営者の不満に対しては「事業者としての努力が足りない」
と言うのですから、雇用賃金以外の地元利益はほとんど期待できないでしょう。

 さて今後予定されている町支出ですが、「今の所、町道を作る計画は無いので、上
水道だけになると思いますが、金額はまだわかりません」とのことです。上水道の敷
設は事業支出です。事業のための支出に公金を使わないでください。公金を利用しよ
うとする企業体質は、政財界の癒着・腐敗政治を生み、行政に対する贈収賄事件の温
床になります。サホロリゾートと町行政・町議会に癒着がないのであれば、町は一企
業のために、これ以上公金を支出しないで下さい。

● 廃棄物処理計画について

 残念ながら新得町のゴミ処理は多くの問題点を抱えています。私達ゴミ発生者にと
っては分別無し・負担金無しで非常に楽なのですが、このままでいい筈はなく、資源
回収・プレリサイクル・分別収集・無公害焼却炉建設など、行政と町民が一緒になっ
て改善して行かなくてはなりません。空かん回収を始めたグループの実践は、多くの
町民に考える機会を与えてくれました。「今年の町作り大会ではゴミ問題を考えよう」
という動きもあります。
 ところが大量のゴミを発生させるサホロリゾートの姿勢はどうでしょう。『事業予
定地域内で発生する廃棄物は「新得町じん芥処理場」で処理され、残った不燃物は同
処理場内にある埋立処分場にて処分される』(p.68)としか考えていないのです。ほと
んどの自治体では、事業者が発生させたゴミは事業者の責任で処理する事になってい
ます。サホロリゾートの費用負担は当然の事ですが、まず住民と一緒になって資源回
収やゴミ減量化に取り組んで行こうという姿勢を示してください。

● 農薬使用計画の信憑性について

 ゴルフ場の農薬使用を規制する法的根拠としては、「農薬取締法」「ゴルフ場で使
用される農薬等に関する環境保全指導要綱」(北海道・1990年4月1日施行)「ゴル
フ場で使用される農薬による水質汚濁の防止に係る暫定指導指針について」(環境庁・
1990年5月24日)「ゴルフ場における芝の病虫害・雑草防除指針 −暫定版−」(北
海道農政部・1991年3月)などがありますが、規制は甘く『良好な環境の保全』とい
う目的にはまったく不充分な内容です。
 その事はサホロリゾートも認めているのでしょう。今回のアセスメントも農薬使用
に関して、法的規制よりは一歩進んだものとなっています。昨年サホロリゾートは駐
車場に除草剤の散布を行っていますが(p.259)、 評価書で『農薬の使用はゴルフ場内
に限定し、 スキー場やホテル、 コンドミニアムの芝地等のエリアでは使用しない』
(p.68)ことを約束しました。また今まで(今年は未定)魚毒性C類の農薬を使用して
来ましたが、 『使用する農薬は魚毒性がA類及びB類に限り、 C類は使用しない』
(p.68)ことも約束しました。農薬使用計画によると、全面散布を行うのはティーグラ
ウンド・グリーンへの殺菌剤だけになっています。そして大量の農薬を散布するティ
ーグラウンド・グリーンについては排水を地下浸透させずに集め、吸着トラップで農
薬を除去する事などが記されています。
 農薬使用計画については、農薬使用量が多いこと・スポット散布の定義が曖昧で拡
大解釈の恐れがあること(フェアウェイの90%に散布するのもスポット散布と言うの
であれば意味がありません)など容認できるものではありませんが、それ以前の重要
な問題として計画自体の信憑性があります。

 まず環境審査係に聞いてみました。
         「評価書にはサホロリゾートによる自主規制内容が書かれ、その
        計画に基づいて環境影響評価が行われていますが、評価書の内容が
        守られるために、道ではどのような指導・監督を行うのでしょうか」
         「農薬についての指導・監督は北海道保健環境部環境対策課特殊
        公害係が行います。評価書内容はあくまでも計画であり、法的な規
        制対象にはなりません。約束を守るのは企業のモラルの問題です。」

 次は特殊公害係です。
         「法的規制が守られていなければ指導を行いますが、それ以上の
        指導・監督は行えません。」
         「それでは、事業者から前年の農薬使用実績・当年の使用予定な
        どが提出される筈ですが、公表して頂けますか」
         「公表する仕組みにはなっていません。事業者と町、あるいは住
        民とで協定を結ぶという形しかないでしょう。事業者と相談してみ
        てください。」

 そしてサホロリゾートは農薬使用実績の公表について、
         「難しい問題なので即答は出来ません。検討させてください。」
という事でしたが、8月16日に受けた回答は、
         「法律に従って町や道に報告しているので、現在の段階では住民
        に対しての公表は考えられません。」
というものでした。

 サホロリゾートは『農薬使用量の実績書の作成及びそれに基づいた年間計画書を作
成し、新得町へ報告する』(p.162) 事を約束していますが、町民に対しては公表でき
ない理由を教えて下さい。サホロリゾートが非公表を決めたことで、住民が農薬使用
の実態について知ることは不可能になりました。法律で決められていないからと、住
民に対する公表を断わったサホロリゾートが、法律に基づかない自主規制を守るので
しょうか。残念ながら、サホロリゾートが今まで行ってきた説明は、すべて裏付けの
無い信頼不可能なものになりました。
 サホロリゾートが住民の信頼を得るための出発点が公開の原則です。サホロリゾー
トは8月28日までに、この問題について再回答してください。
 サホロリゾートの姿勢が変わらず、住民に対して法律で対決して行くというのであ
れば、架空の計画に基づく評価書は無効なので、法律で許されている最大農薬散布量
により環境影響評価をやり直すことを要求します。

● 農薬の流出について

 1989年11月北海道広島町でゴルフ場から流失したオキシン銅のために9万尾の養殖
魚が死にました。オキシン銅を大量に使うサホロリゾートからの流出濃度はどの程度
になるのでしょう。評価書には『不確実な要因を数多く含んでいる』と前置きした上
で、 平均的な降雨で 0.02ppm(0.02mg/l)、豪雨だと 0.3ppm(0.3mg/l) になる可能性
が示されています。0.18ppm のオキシン銅は体長 5cm前後のコイを48時間で半分殺し
ますが、それよりも高い濃度の流出がありうるのです。それでも『環境保全水準は維
持されるものと考えられる』というのがサホロリゾートの自然生態系に対する認識で
す。

 私は「オキシン銅のコイに対する半数致死量は  0.18ppm である」と本に書いてい
るのを見つけた時、 誤植だと思いました。魚毒性 B類の農薬はコイに対する半数致
死量が  10〜0.5ppm と聞いていたし、環境庁によるゴルフ場の排水指針値は 0.4ppm
となっているからです。特殊公害係に問い合わせてみたところ正しいことが確認され
たので、農林省がC類にしない根拠、環境庁が 0.4ppm という指針値を決めた根拠を
調べてもらいましたが、今の所「専門家が総合的に判断して決めた」という事しかわ
かっていません。コイの半数致死量という客観的な実験データ、広島町での大量死事
件という現実を考えると、  とてもオキシン銅の使用を認めることはできませんが、
「魚毒性が低いので 0.4ppm の流出があっても環境は保全される」というのであれば、
根拠を示して私達の不安を取り除いてください。

● ゴルフ場の農薬使用量について

 評価書で提示された農薬使用計画を見てみましょう。新設ゴルフコースは既設ゴル
フコース(グリーンが  412〜558u/1ホール、ティーグラウンドが 8700u/18ホール、
フェアウェイが 94000u/18ホール)の2倍の面積だと仮定して 10a当りの農薬使用
量を計算してみました。 驚いた事に、グリーンの年間農薬使用量は 反当 20kg にな
ります。これは農地での使用量と比較して桁違いに多いものです。

 では、もっとも使用量の多いキノンド80のグリーンへの散布について検討してみま
しょう。 キノンド80は商品名で成分がオキシン銅 80%です。キノンド80は越冬中の
病気を予防するために11月に散布されますが、   ゴルフ場での標準使用量は   反当
2.5kg  との事です。秋蒔き小麦の雪腐れ病予防に使う場合は成分含有量 40%のもの
で  反当 250g〜500g ですから、ゴルフ場には約15倍の標準使用量が認められている
ことになります。
 また、 昨年の農薬散布実績によるとグリーンへの散布は2日間(11/9 と 11/13)
ですが、各ホールについては1回の散布だったようなので、標準使用量で計算すれば
1ホール当り1.2kg になります。それに比べて農薬使用計画の 1ホール当り 4.2kg と
いうのはあまりにも多いのですが、どうしてでしょう。

 その他にも、スミチオンは1回の使用量が、農地では 反当 100ml 程度なのに、グ
リーンでは 反当 800ml も使用することになっています。

 ゴルフ場における農薬散布の特徴は単位面積当りの農薬使用量が非常に多いことで
す。規制がなかった時代の農薬乱用が既成事実となってしまい、農薬メーカー・ゴル
フ場などの業界圧力に屈した形でしか規制が行えない所に根本的な問題があります。
道に対しては規制の抜本的見直しを求めるものですが、住民として法規制の改善をの
んびりと待っている訳にはいきません。

 このように大量の農薬を投入することが本当に効果のあることなのか疑問です。単
位面積当りの農薬投入量と病虫害発生との関係は明らかになっているのでしょうか。
農業での農薬散布量は試験研究の結果、充分な量と考えられたものです。ゴルフ場も
農地に対する農薬散布量まで減量することは容易なはずです。それで芝が枯れるとい
うのであれば、農薬が少ないのが原因ではなく、農薬散布時期や土壌・肥培・排水管
理などに問題があるのでしょう。農薬使用量を増やすのは簡単ですが、農薬使用量を
増やせば防除効果も増大すると思うのは間違いです。農薬は土の微生物相を貧弱にし
ますから、農薬が切れると病原菌が大繁殖する禁断症状の状態を作り出すと言えるで
しょう。

 サホロリゾートはまず今あるコースの減農薬に取り組み農薬の使用を 1/10 に減ら
してください。実績を示さずに住民の理解を得ようとしても無理です。ゴルフコース
増設についての協議はそれからです。道は減農薬の実績が無いサホロリゾートに対し、
ゴルフコース増設を認可しないでください。

● サホロ湖の富栄養化について

 評価書にはサホロ湖の窒素・リン濃度が2倍になるとの予測はあっても、どのよう
な影響があるのかまったく評価していません。サホロ湖がこのように富栄養化した場
合、そして佐幌川の窒素・リン濃度が高くなった場合、サホロ湖や佐幌川に住む生物
はどのような影響を受け、佐幌川の水質はどのように変化するのでしょうか。私達は
佐幌川の水で生きているのですから、上流で水を汚されると非常に困ります。サホロ
リゾートは私達の水の事を、そんなに安易に考えているのですか。

        私は意見書に『p.150  表中 T-P 0.019mg/lは 0.041mg/l の誤り』
        と書きましたが、環境審査係より「間違いではない」との指摘を受
        けました。確かに評価書の通りで計算に誤りは無いようです。サホ
        ロ湖に流れ込む川のリン濃度は  0.041mg/l になっても、サホロ湖
        表層のリン濃度は  0.019mg/l にしかならないそうです。リンはサ
        ホロ湖の湖底に沈澱して蓄積されると言うことなのでしょうか。

● 合成洗剤による水汚染について

 評価書には記載がありませんが、合成洗剤による水汚染の問題があります。LAS な
どの合成界面活性剤は毒性が高く、使用量も多いことから、環境に対する悪影響は計
り知れませんが、 放流水質の規制値としては BOD 値などが決められているに過ぎま
せん。ところが微生物により分解される粉石鹸より、分解されづらい合成洗剤の方が
BOD 値は低く、合成洗剤の使用に関しては野放し状態と言えます。佐幌川上流で大量
の合成洗剤を使用することは川や海を汚すだけではなく、「まず自分達の暮しを見直
そう」とする人々の気持ちを踏みにじるものです。
 環境問題に対する企業姿勢が問われている今、サホロリゾートは「環境問題を考え
て合成洗剤を使用しない」ことを宣言してください。「セゾングループは環境問題に
関しては常に時代を先取りしてきた」「これから自然環境を守っていくのはリゾート
企業になると思う」と話したのはサホロリゾートの井出さんです。もちろん実行して
くれますね。

● 最後に

 今回のアセスメントにより、サホロリゾートの農薬使用実態など現在抱えている多
くの問題点が明らかになった事は良かったと思います。サホロリゾートに対しては、
このアセスメントで住民の信頼を得られなかったことを、まず反省して頂きたい。そ
して少しでも信頼を回復できるよう、環境破壊を減らすよう努力して頂きたいと思い
ます。
 もちろん、これ以上の環境破壊は許されませんから、道に対しては事業の中止を求
めるものです。 

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