高規格幹線道路夕張清水線

                    環境影響評価準備書に関する意見書

                                                        1996年8月26日
    北海道開発局長 様

                         <提出者>  〒081 北海道上川郡新得町字新内西1線125
                                                    芳賀 耕一(41才・農業)
                                                       TEL/FAX: 01566-4-6893
                                           E-Mail: QGB03373@niftyserve.or.jp

 高規格幹線道路夕張清水線に係る環境影響評価準備書について、公害の防止及び自
然環境保全の見地から、次の通りの意見を述べます。

                    意 見 の 要 旨

1 本意見書の全文記載の申し入れ
   私がこの意見書を提出するのは、北海道開発局長に期待してのことではない。北
  海道開発局はどうしても本件開発事業を進めたい立場にあり、「公害防止、自然環
  境保全は予測評価の結果、環境保全目標を満足しており、環境保全対策を必要とし
  ない。」とすでに表明しているのである。
   それでも、私が多大な労力をかけてこの意見書を書いたのは、北海道知事・関係
  市町村長・環境庁長官・主務大臣、そして一人でも多くの住民に読んでもらうため
  である。
   北海道開発局は説明会において、私の質問の大半について回答を拒否した。本件
  開発事業の必要性を判断するのに不可欠な自動車起終点調査結果や2010年予測交通
  量は、北海道知事や関係市町村長にさえ秘密とされている。
   この意見書は、公表されているデータを頼りに、北海道開発局が主張する事業の
  効果・計画交通量等について具体的に検証したものである。意見の要旨だけを取り
  出したら、意見書としての価値がなくなる。
   したがって、
      (1) 北海道知事および関係市町村長に意見書全文を送付すること
      (2) 評価書には意見書全文を記載すること
  を厳重に申し入れる。
   また、私は住所・氏名等についても、すべて公表したいと考えているので、この
  意見書を直接版下として使用することを希望する。

                    意見の内容・理由等

1 はじめに
   北海道開発局が作成した「北海道開発局が行う環境影響評価」というパンフレッ
  トは、次のような文章で始まる。
                                     記
        ■よりよい環境の実現にむけて……
        私たちの住む北海道では、自然の厳しい条件を克服し、人間らしい生活の場
        をつくるために、各種の開発事業が積極的に進められてきました。この結果、
        北海道の基幹的な基盤整備は飛躍的に充実してきましたが、豊かで潤いのあ
        る生活を実現するためには、今後ともこれをさらに拡充し、地域の均衡ある
        発展に努めていく必要があります。
        ●北海道の最大の魅力は、<自然>です。
            (以下略)
   確かに、北海道の基幹的な基盤整備は飛躍的に充実してきたが、北海道の最大の
  魅力である自然は壊される一方である。現在の北海道に、クマゲラやシマフクロウ
  などが生息できる森林地帯はどれだけ残されているのか。
   私たちは、物質的豊かさや生活利便性を追い求めることが「豊かで潤いのある生
  活」と思い込んでいたが、多くのものを失って、ようやくその誤りに気付いたので
  ある。  総理府の1994年世論調査においても、  「生活利便性より環境保全を優先
  50.0%/環境保全より生活利便性を優先  34.5%」という結果が出ており、建設省道
  路局・都市局が作成した資料集には次のように書かれている。
                                     記
         バブルの崩壊、阪神・淡路大地震等をとおして現れたさまざまな出来事は、
        戦後50年、貫いてきた価値観が崩壊しつつあることを明らかにしたと言え
        る。物質的には戦後の大目標であった欧米へのキャッチアップが既に意味を
        持たなくなりつつあるとともに、一貫して拡大してきた右肩上がりの経済に
        ついてもその様相が一変しつつある。21世紀に向けて、新たな価値観の創
        出が求められるとともに個人と社会のかかわり(住民と行政など)、資源の
        配分(国と地方、官と民など)のあり方についても今までとは違ったものが
        求められている。
   特に、開発一辺倒で進んできた北海道は今大きな転機を迎え、新しい時代にふさ
  わしい方向性を模索し始めたところである。
                                     記
        支出抑え自然を生かせ
         私は何も、北海道民は文明に背を向け森にこもって暮らせと言っているの
        ではない。豊かな生活を支えるためにどうしても必要な基盤の整備にきちん
        と金を使い、無駄を少なくしようと言っているのである。開発にはそろそろ
        終わりがあるはずだ。われわれはそろそろ、北海道の豊かな自然を生かして
        どのような価値を生み出すことができるかを考えなければならない。(山口
        二郎北大教授・北海道新聞1996年7月28日より)
   このような状況にあって、なぜ北海道開発局は古い価値観にしがみつくのか。自
  らの組織存続を図るためと思われても仕方が無いだろう。
                                     記
         開発庁の加藤昭事務次官は「最近の開発論は、ややもすると開発庁という
        役所の組織論になっていた」と反省する。
         開発論議に実りがあれば、役所が最も恐れる「不要論」も、頭をもたげる
        ことはないだろう。(北海道新聞1996年8月24日社説より)
   とにかく、北海道開発局に公正な判断を期待するのは無理な話だ。
   今もっとも大切なことは、本件開発事業のメリット・デメリットのすべてを具体
  的に明らかにすることであり、国・自治体・住民がじっくり考えられるだけの時間
  と機会を作ることである。拙速は後世に悔いを残すことになる。

2 自然環境について
   環境影響評価準備書からも明らかなように、本件開発事業は、クマゲラやシマフ
  クロウなど多くの生き物たちが暮らす豊かな森林を分断するものであり、自然環境
  に悪い影響を与えることについては誰にも異存がないだろう。
   私は動植物について詳しくないので、クマゲラとシマフクロウを例に概括的な意
  見を述べることにする。
  (1) クマゲラについて
     有澤浩氏の著書「クマゲラの森から」によれば、「成熟した針広混交林におけ
    るクマゲラの行動圏は、繁殖期で三〇〇ヘクタールを必要としている。単純に計
    算しても、近親交配による劣性遺伝子を避けるためには、少くとも百つがいが棲
    める三万ヘクタールの森林が必要となる。しかもこれは遠くばらばらに隔離され
    て存在する森林をトータルとしての面積では意味はなく、まとまりのあるものか、
    森林と森林が最低でもベルト状に連続していなければならない。」とのことであ
    る。
     夕張清水線は、クマゲラが複数生息する森林地帯を分断するものである。調査
    区域が極めて狭いにもかかわらず、 9本の営巣木・115本の採餌木・7羽の個体
    又は鳴き声が広範に確認されるなど、クマゲラが繁殖できる豊かな自然環境を備
    えた地域である。ところが北海道開発局は、森林分断の影響については何も言及
    していないばかりか、「本種の生息環境に適していると考えられる大径木を含む
    森林が広域に分布」しているから、環境保全対策を必要としないという。
     クマゲラは天然記念物・主要野生動物・希少種に指定されるなど「全国的価値
    に値するもの」であるから、北海道開発局の保全目標も「環境要素を努めて保全
    する」ことになっている。これは「環境要素への影響を努めて最小化する」「環
    境要素を相当程度保全する」より、厳しい基準らしいが、実際には同一視されて
    いる。「予測すべき地域の範囲は、対象項目に関する調査地域の範囲内で指針に
    おいて定めるものとする。」(環境影響評価に係る調査、予測及び評価のための
    基本的事項)にもかかわらず、こんな理屈が通るのなら、何のために環境アセス
    メントを行ったのか。
     クマゲラはシマフクロウに比べれば生息数が多いため、ほとんど環境保全対策
    がとられていない現状がある。しかし、シマフクロウやトキのようになってから
    保護策をとるのでは明らかに手後れだ。まとまった森林を残すことにより、クマ
    ゲラを含む北海道特有の豊かな生態系を保全すること、これこそが「豊かで潤い
    のある生活」というものであろう。
     北海道教育委員会において刊行された「天然記念物エゾシマフクロウ・クマゲ
    ラ特別調査報告書」には、次のように記されている。
                                     記
           2年間の調査と、これまでのクマゲラに関する報告を参考に、以下にク
          マゲラの保護を考える場合の重要点をいくつか列記し、報告を終りたい。
              1)  現状の森林(特に針広混交林)をできるだけ維持し、大面積にわ
                たる伐採をさける。
              2)  森林内の胸高直径が50cm以上、下枝高が13m以上あり、 樹幹が通
                直でその表面がなめらかな樹木は、営巣木として好適なので伐採せ
                ず残す。
              3)  クマゲラは同一の巣孔を連年使用する習性をもち、さらに繁殖の
                ためには数100haのテリトリーを必要とするので、 営巣木を確認し
                た場合は、少なくとも半径500mの範囲内は一切伐採しない。
              4)  冬期の採餌源として重要な意味を持つ、すでに採餌跡のある立木
                は伐採せず、そのまま残す。
     北海道開発局は「クマゲラの保護を考える場合の重要点」を、すべて無視する
    ものであるが、クマゲラの調査については少なくても1kmの幅で詳細な再調査を
    する必要がある。
  (2) シマフクロウについて
     計画地周辺にシマフクロウが生息しているのは間違いないが、聞き取り調査の
    結果を評価準備書に載せていないため、本件開発事業がシマフクロウの生息にど
    のような影響を与えるのか判断のしようがない。シマフクロウの生息場所を明ら
    かにしたくない事情があるにしても、シマフクロウがどの辺に生息していて、高
    速道路のどの部分をトンネルにするのかというアセスメントのもっとも核心の部
    分が評価書に載らないのであれば、何のためのアセスメントか、まったく不明で
    ある。
     シマフクロウについてさえ、たった9日の調査しか行わず、「今後の調査等に
    より、シマフクロウへの影響がある場合には、必要に応じて調査を実施し、適切
    な保全対策を講ずるものとする。」で済まそうというのは、アセスメント制度を
    根幹から否定するものである。

3  予測交通量について
   本件開発事業の必要性を判断するうえで、予測交通量は一番の要である。しかし
  北海道開発局は推定の方法・推定の根拠について一切明らかにしないばかりか、他
  の路線(日勝峠・狩勝峠等)の予測交通量さえ秘密としている。
   評価準備書によれば、 トマムIC・十勝清水IC間の2010年予測交通量が14200
  台/日となっている。この区間がもっとも推計しやすいので、これを検証する。
  (1) 道路交通センサスによる現状について
     1994年道路交通センサス時点で、国土開発幹線自動車道が全通していたと仮定
    して、夕張清水線のトマムIC・十勝清水IC間を通行する可能性のある車は次
    のとおりである(平日24時間交通量)。なお、カッコ内は1990年の自動車交通量
    である。
        A 一般国道274号「上川郡清水町石山」 を通過した6869(5731)台/日
        B 一般国道 38号「上川郡新得町北新得」を通過した3849(4561)台/日
        C 一般国道 39号「常呂郡留辺蕊町大町」を通過した3896(4016)台/日
        D 一般国道336号「広尾郡広尾町音調津」を通過した1760(1714)台/日
  (2) 推計方法について
     トマムIC・十勝清水IC間の2010年予測交通量(平日24時間)は次のような
    計算式で推計できる。
        (6869×p1×k1+3849×p2×k2+3896×p3×k3+1760×p4×k4)×n
               p1, p2, p3, p4: ABCDの各通過車両について、起終点から考え
                  て、高規格幹線道路夕張清水線を利用可能な自動
                  車の割合
                k1, k2, k3, k4: 上記自動車の内、通行料金を払って高速道路を利
                                用する自動車の割合
                n:              2010年自動車交通量/1994年自動車交通量
  (3) p1〜p4 について
     p1〜p4  は北海道開発局が行った自動車起終点調査  (オーナーインタビュー
    OD調査)に基き正確に算定できる。ところが、北海道開発局はこれをすべて秘
    密としているため、私としては推測する他ない。
     Aについては通過車両の大半が清水・日高間を通行するものと考えられるから、
    p1 は高いと考えられる。
     Bについては占冠・夕張・札幌方面を起点あるいは終点とするものが対象にな
    る。しかし、新得町民の大半が日勝峠を経由して札幌へ行く現状から考えて、p2
    はかなり低いものと考えられる。
     Cについては北見・網走方面および札幌方面をそれぞれ起終点とするもの、D
    については帯広・釧路方面および苫小牧方面をそれぞれ起終点とするものが対象
    となるが、私には p3・p4 について判断する材料が無い。
     本意見書においては次のように仮定して試算をするが、p1〜p4  については、
    北海道開発局において正しい数字に置換していただきたい。
        p1 = 0.98
        p2 = 0.10
        p3 = 0.20
        p4 = 0.20
  (4) k1〜k4 について
     まず、高速道路と一般国道の現状を比較する。距離および所要時間は建設省道
    路局監修の「道路時刻表1996年版」の下り、料金は普通車の通行料金とし、高速
    利用率は1994年度平日24時間交通量調査により算出した。また、単価欄は通行料
    金を短縮時間で除したものである。
----------------------------------------------------------------------------
路線名       区間                             距離   時間  時速  料金  単価
----------------------------------------------------------------------------
道央自動車道 虻田洞爺湖IC〜苫小牧東IC         97.2  01:14  78.8  2600  2229
国道37・36号  虻田洞爺湖IC〜苫小牧234号交点   104.7  02:24  43.6
高速利用率   15.9〜33.7%(市街地を除く各IC間)
----------------------------------------------------------------------------
道央自動車道 苫小牧東IC〜北郷IC               45.1  00:29  93.3  1550  1788
国道36号     苫小牧234号交点〜札幌市453号交点 53.7  01:21  39.8
高速利用率   40.4〜52.6%(市街地を除く各IC間)
----------------------------------------------------------------------------
道央自動車道 札幌IC〜旭川鷹栖IC              125.3  01:27  86.4  3150  1488
国道12号     札幌市基点〜旭川市終点          136.7  03:34  38.3
高速利用率   36.7〜45.3%(市街地を除く各IC間)
----------------------------------------------------------------------------
道東自動車道 十勝清水IC〜池田IC               50.3  00:41  73.6  1450  3346
国道38・242号 清水町〜池田町                   52.4  01:07  46.9
----------------------------------------------------------------------------
札樽自動車道 小樽IC〜雁来IC                   36.4  00:27  80.9  1150  1605
国道5号     小樽IC〜札幌市終点               36.2  01:10  31.0
高速利用率   49.8%(朝里IC〜銭函IC間)
----------------------------------------------------------------------------
関越自動車道 月夜野IC〜湯沢IC                 35.9  00:28  76.9  1450  2231
国道17号     月夜野IC〜湯沢IC                 50.4  01:07  45.1
高速利用率   85.8%(水上IC〜湯沢IC間)
----------------------------------------------------------------------------
道東自動車道 夕張IC〜十勝清水IC(時間は推定) 81.0  00:54  90.0  2150  1573
国道274号    夕張市〜清水町                  107.9  02:16  47.6
----------------------------------------------------------------------------
     道内の高速道路利用率は最高地点で52.6%となっているが、 三国峠のようにヘ
    アピンカーブの連続する険しい峠においては85.8%という数字も見られる。
     私はこれらのことを総合して、k1 が65%程度になると予測する(無積雪期間が
    50〜60%・積雪期間が75〜85%)。その余についてはデータが不足しているが、次
    のように仮定する。
        k1 = 0.65
        k2 = 0.60
        k3 = 0.30
        k4 = 0.30
  (5) n について
     前記(1)において、A〜Dの合計交通量は 1994年16374台/日・1990年16022台
    /日で、年率 0.545%の伸びとなっている。この伸び率で試算すると、
        n = 1.09
    となる。
     たぶん、北海道開発局は「高規格幹線道路網の完成が交通量の増大をもたらす」
    と反論するだろう。確かに、JRからバスへの転換はあるだろう。しかし、現在
    の北海道は道路ができるくらいで交通量が増大するような情勢にはない。なによ
    り、日本では交通量の増大を防ぐことこそが今求められているのである。
  (6) 計算結果について
     以上の数字を前記(2)の計算式に当てはめれば、 2010年の平日交通量は5391台
    /日となり、 同様の方法で2010年の休日交通量についても推計すると11257台/
    日となる。これらを元に平日:休日=7:3で加重平均すると2010年予測交通量
    は7151台/日となった。
     私はこの数字が正しいと主張するものではない。何しろ統計データは隠されて
    いるし、短時間での予測である。しかし、はっきりしているのは、 14200台/日
    という数字がまったく根拠の無い恣意的な数字だということである。
     北海道開発局が、まずこの点についてすべてを明らかにしなければ、本件開発
    事業の必要性について論ずることは不可能である。

4 事業の費用について
  (1) 事業費用の推計
     夕張清水線の建設費がどれくらいになるのか、北海道開発局は答えようとしな
    い。建設費がまったく分からなければ、必要性について判断を行える筈がない。
     仕方が無いので、これも推計してみる。
     他の路線での実績から考えて、建設費が2000億円以上になることは間違いない。
    山岳地帯でトンネルや橋梁が多いことを考えれば、実際には2000億円をはるかに
    超えるだろう。
     維持更新費も不明であるが、国の平均値4200万円/km・年を当てはめれば 34億
    円/年になる。建設費2000億円・40年償還・交通量7151台/日・通行料金27円/
    km・台とすれば、
        建設費      23.6円/km・台        50億円/年・区間
        維持更新費  16.1円/km・台        34億円/年・区間
        合計        34.7円/km・台        84億円/年・区間
        料金収入    27.0円/km・台        57億円/年・区間
        粗利益      -7.7円/km・台       -27億円/年・区間(支払い利息を除く)
    同じく、建設費3000億円なら、
        建設費      35.5円/km・台        75億円/年・区間
        維持更新費  16.1円/km・台        34億円/年・区間
        合計        51.6円/km・台       109億円/年・区間
        料金収入    27.0円/km・台        57億円/年・区間
        粗利益      -7.7円/km・台       -52億円/年・区間(支払い利息を除く)
    となる。
     さて、道路審議会の「今後の有料道路制度のあり方についての中間答申(高速
    自動車国道について)」(以下「中間答申」という。)には次のように記されて
    いる。
                                     記
           料金水準は、償還制度やプール制など有料道路制度の基本的枠組みが定
          められればその下で、建設の進め方(未着手区間に係る事業計画、経費節
          減等)と公的助成との関係において決定される。したがって、残区間につ
          いて新規着手を図るとすれば、それに応じて料金水準や公的助成について
          見直しを行うことが必要となり、また、料金水準に対して社会的制約が加
          えられるとすれば、それに応じて新規着手の見直しや公的助成の拡充が必
          要となる。
           このような相互関係を勘案すると、これらを一体的に検討することが必
          要である。あわせて、建設に要する費用、料金水準の見通し、経費節減等
          に関する資料を公表するなど、国民が料金と計画等の関係を理解できる情
          報を適切に開示し、幅広く意見を把握していくことが重要である。
           具体的には、計画段階、例えば整備計画策定時において、公的助成のあ
          り方や料金水準の見通し等を公表することによって、多方面の意見を把握
          し、建設の進め方に反映させるよう努める必要がある。
     まず北海道開発局がきちんと情報を開示し、国民が幅広い論議を行える環境を
    整備することが重要である。
  (2) 赤字補填について
     夕張清水線が赤字路線となることは疑いようがない。中間答申にもあるように、
    赤字は、先発路線からの内部補助・道路特定財源からの公的助成・一般財源から
    の公的助成・地方公共団体の財政負担により補填するしかない。その結果、料金
    引上げ・一般道路整備の遅れ・増税をもたらすことになる。
                                     記
          4. 全国プールの負担軽減と高速ネットワークの早期整備
                    − 一般国道自動車専用道路による代替 −
           未だ整備計画が策定されていない3,630kmの全てを、 高速自動車国道と
          して、これまでの公的助成の枠組みの下で利用者の料金負担を基本に建設
          しようとすれば、比較的高い水準での料金改定が必要となる。
           一方、出資金や利子補給金などの国による公的助成を大幅に拡大させ、
          現行の財源制度を前提として税負担を基本に高速自動車国道を建設しよう
          とする場合、基本的には同じ財源により賄われる一般道路整備の進捗に大
          きな影響を及ぼすこととなる。
           このように、国の出資金や利子補給金による公的助成の従来からの枠組
          みのもとで、料金負担を基本とする方策、あるいは公的助成の大幅な拡充
          のみを基本とする方策では、今後の高速自動車国道の整備が困難になって
          いる。
                  (中略)
          5. 公的助成のあり方
           公的助成と料金水準は相互に関連するものであり、料金の上昇は、その
          助成に応じて抑制しうるものとなる。このため、高速自動車国道の整備を
          推進するにあたっては、採算の厳しい路線について資金コストを3%とし、
          利子補給による公的助成の拡充を図る等、出資金及び利子補給金を併用し
          て国費助成を行うことにより、料金上昇の抑制に努めてきている。
           しかし、今後採算の厳しい区間の整備を計画的に進めるためには、プー
          ルに新たに追加して整備する路線に対しても出資金や利子補給金による公
          的助成の一層の拡充に努める必要がある。
           従来、高速自動車国道に対する出資や利子補給等の財政的助成は国によ
          り行われてきている。今後、国と地方の一層の連携の下で、高速ネットワ
          ークの着実な整備を図る観点から、前述のような一般国道自動車専用道路
          による代替や、インターチェンジ整備における高速自動車国道と取り付け
          道路との事業区分の見直し等、国と地方が一定の分担のもとで整備を進め
          ている一般道路事業の活用を通じて、地方からの支援の拡大を図ることが
          必要である。
           また、高速自動車国道整備による大都市圏の交通環境の改善、地方圏の
          地域開発効果にかんがみ、整備に係る費用の一部に、地方からの直接的な
          助成を導入することによって高速自動車国道への助成水準を引き上げるこ
          とも考えられる。
           当該方策については、高速自動車国道の国土基盤としての性格や、地域
          に直接与える開発効果も勘案しつつ、国と地方の新たな連携のあり方も考
          慮し、その是非を含めて今後広範な議論が必要である。
           今後、高速自動車国道の供用により自動車利用者以外の者が受ける利益
          も、適切に高速自動車国道の建設に充当する観点から、一般財源からの助
          成の強化や現行の道路特定財源以外の分野に新たな助成のための財源を求
          めることも考えられる。その場合、当該受益の波及範囲や受益の程度を適
          切に評価する手法の開発が必要であるとともに、一般道路も含め、他の交
          通機関等においても、同様の議論があり得ることから、引き続き幅広く検
          討すべき課題である。
   道知事・関係市町村長が採算性に無関心なのは、地方自治体の財政には無関係だ
  と考えているからだろう。本年7月に提出された、本件事業計画に関する道知事・
  道各部長・関係市町村長の意見を見れば、皆、本気で物事を考えていないことが一
  目瞭然である。「北海道における最大の産業は公共事業とさえいわれる。地元政財
  界の最大の使命が開発予算の獲得といった姿勢でいる限り、将来展望は開けない。
  換言すれば、北海道の開発は道民のためだけでなく、国民すべての利益にかなうも
  のでなければならない。」(北海道新聞1996年8月24日社説より)。地方公共団体
  の長たるもの、もっと真剣に考えて意見書を書いていただきたい。

5 事業の効果について
   評価準備書には、事業の目的・効果が書かれているが、いずれも抽象的であり、
  必要とする費用に比べて、期待できる効果は極端に少ないものと考える。
   速さ・利用コスト・定時性の確保・快適性・安全性を考えるならJRを利用すれ
  ばいいのである。ところが高速道路の整備はJRと競合し、結果としてJR利用者
  に不便をもたらすことになる。
  (1) 輸送時間の短縮
     輸送時間だけを考えれば、短縮されるのは当然である。ところが1時間短縮さ
    れても通行料金を稼ぐのに2時間の労働が必要とすれば、手放しでは喜べない。
     「狭い日本、そんなに急いでどこへ行く」という交通標語があったが、スピー
    ドばかり追い求めていたら、「豊かで潤いのある生活」など出来るはずがない。
  (2) 走行経費の節約
     走行経費で重要なのは通行料金である。利用者にすれば、通行料金で短縮時間
    を購入したとも言えるだろう。運送会社は通行料金と人件費等を比較してコスト
    的に引き合えば高速道路を利用させるだろうが、運転手はその分収入が減るわけ
    だから喜んでばかりもいられない。
     北海道開発局からもらったパンフレット「高規格幹線道路・道のスプリンター」
    には、図入りで次のような文章が載せられている。
                                     記
          ●省エネルギーも、うれしいメリットです。
           地球環境の保全にも貢献します。
           <一般国道333号北見峠と旭川・紋別自動車道(上越〜白滝)
            における普通貨物車消費燃料の比較>
                  ●一般国道333号      勾配6〜7% 延長23km
                  ●旭川・紋別自動車道   勾配2〜3% 延長19km
          ●貨物車一台あたりの消費燃料が、およそ1/3に!
     特殊な例を掲げて人を騙そうとする極めて悪質な宣伝であるが、これが北海道
    開発局のやり方なのだろう。また、建設エネルギーを合算したうえで省エネルギ
    ーといっているのか。高速道路が、本当に「地球環境の保全にも貢献」するとい
    うのであれば、その価値を見直さなくてはなるまい。きちんと根拠を示して頂き
    たい。
     同じ距離を走るのに60km/hより100km/hの方が燃料代が余分にかかるのは常識
    である。しかし一般道が渋滞していたり、峠越えがトンネルになったりすれば、
    高速道路の方が燃料代が少なくて済む場合もあるだろう。では夕張清水間で高速
    道路と国道を比較するとどれだけの節約効果があるのか、評価準備書の「走行経
    費」というのが何を含むのか、北海道開発局に質問したが回答はない。「走行経
    費の節約」と明示しているからには、きちんとシミュレーションしているのだろ
    う。計算方法と計算結果を明らかにして頂きたい。
  (3) 定時性の確保
     並行する一般国道はいずれも渋滞がなく、定時性の確保について何ら問題はな
    い。
  (4) 運転者の疲労度の軽減と快適な走行性の確保
     両側を壁に囲まれた中での高速走行は、疲労の少ない快適な走行とは言い難い。
    また、高速道路の走行は横風の影響を受けやすい。北海道では一般道の大半が疲
    労度の極めて少ない快適な道であり、これに不服をいうのはあまりにも贅沢だ。
  (5) 交通事故の減少
     高速道路の交通事故発生率が低いからといって、必ずしも地域全体の交通事故
    の減少につながるとは言えない。高速道路のスピードに慣れた人が一般道に降り
    た直後に事故を起こす事例も多いだろう。交通事故を減少させるには全交通量を
    減少させることが重要であるし、高速道路の赤字が交通安全対策の財源を食い潰
    すかもしれない。
     北海道の交通事故死者数は、少ない月から順に1月・2月・3月・4月・11月
    …となっている。走行が危険な月ほど交通事故死者数は少ないのである。同様に、
    多くの人が危険と感じている国道274号であるが、 実際には他の一般国道と比較
    して交通事故発生率は低い方である。逆に際立って交通事故発生率が高いのは国
    道5号である。安全対策を施すことが必ずしも交通事故の減少に結びつかないと
    いう難しさはあるが、日勝峠・狩勝峠はずいぶん走りやすくなった。狩勝峠につ
    いてはすでに安全上の問題は解消したといっていいだろう。帯広開発建設部の道
    路整備予算は年間203億円 (1996年度)である。夕張清水線の赤字一年分を日勝
    峠の整備に回すことが可能とすれば、どれ位のことが出来るのだろうか。
  (6) 市場圏の拡大効果・地域産業の振興
     現在、北海道の農林水産業は厳しい立場に置かれているが、別に輸送時間がネ
    ックになっている訳ではない。また、輸送時間が短縮されても通行料金がかかる
    から、輸送コストが低減されるかは微妙である。道内生産物の大半は貯蔵性の高
    いものであり、高速道路の開通により「市場圏の拡大が図られ」、「地域産業の
    活性化が図られ」る可能性があるのは、地域産業のごく一部に過ぎない。
  (7) 観光による地域経済の活性化
     言うまでもなく、北海道の最大の魅力は自然である。多くの観光客が北海道を
    訪れるのは、まだ自然が残されているからであり、広々とした北海道を体感した
    いからであり、のんびりと時間を過ごしたいからである。そして、そんな北海道
    に魅力があるから移住者も多いのである。
     一般道であれば、酪農家手造りのアイスクリームが牛舎の横で食べられるし、
    畑の脇ではトウキビだって買える。運転に疲れたら、ぼんやり牛を眺めたってい
    いし、ソバの花・芋の花に見入ってもいい。お腹が空いたら、地場産品を材料に
    した店を探してみよう。
     ところが、高速道路を走ったら見えるのは壁ばかり。誰がそんな北海道に魅力
    を感じるのか。高速道路は生産の場・生活の場から切り離された空間である。レ
    ストランで食事しても都会と同じで味気ない。観光客にとって移動時間はけっし
    て無駄な時間ではない。ゆっくり移動してもらい、たっぷりと北海道を味わって
    もらう。これが北海道の観光が発展するためのポイントである。
     高速道路を作って「観光による地域経済の活性化」を図るというのは勘違いも
    いいところで、自滅行為としか言い様がない。
  (8) 社会生活圏の拡大
     高速道路など無くても、新得・札幌間はJRで約2時間10分・片道5150円(特
    急自由席)である。しかし、札幌まで買物やレクリエーションに出かける人はご
    く僅かであろう。また、帯広へ買物に出かけるのに高速道路を利用する人など聞
    いたことがない。
     高速道路ができると、「日常生活における利便性が向上し、関連地域における
    生活圏の拡大による定住化及び文化交流の促進が期待されます。」という北海道
    開発局。本気で言っているとは、到底思えない。
  (9) 高次医療機会等の確保
     一刻を争う患者を札幌まで搬送しなくてはならない状態こそが問題であり、各
    地域において救急医療体制を整備することが急務である。一次的処置が済んでい
    れば、高次医療施設への転院は一般国道で十分である。更にスピードが要求され
    る場合には、ヘリ輸送を考えるべきだろう。
     高次医療機会等の確保のために高速道路に税金を投入するのであれば、その一
    部を医療に直接投資すべきである。
  (10) 災害時等におけるネットワーク確保
     この地域は、道内でも特に道路網が整備された地域であり、札幌・旭川・帯広・
    釧路…と多方面に通じている。積丹町の人がこの概要書を読んだら、どんな思い
    を持つだろう。緊急輸送ルート・代替ルート・迂回ルートを切望している人が、
    この地域にいるとは思われない。

6 結論
   私にとって高規格幹線道路夕張清水線はまったく不要な存在だし、貴重な自然を
  壊して欲しくないと切望しています。
   でも私だってあまり人に憎まれたくはありません。道民の多くが夕張清水線の開
  通を心底望んでいるのであれば、引き下がらなくてはならないと思い、いろんな人
  に意見を聞いてみました。自然保護に関心のある人が計画中止を望んでいるのは当
  然ですが、自然保護に関心を持たない人も夕張清水線に冷淡な人がほとんどでした。
  冷淡というのは、別に反対ではないけれど期待もしていないという意味です。士幌
  高原道路に地元で反対すると村八分になるそうですが、私が夕張清水線に反対して
  も、推進の声は北海道開発局からしか聞こえてきません。
   北海道開発局にも言い分があるでしょう。もしかすると、道民の多くが高速道路
  の必要性に気付いていないだけかもしれません。私は事業の効果について不明な点
  をたくさん質問しました。でも答らしい答は返ってきません。夕張清水線が本当に
  必要不可欠なのであれば、すべての情報を明らかにしたうえで、きちんと説明でき
  る筈です。
   きちんとした説明がなされていない現状において、私はこの開発事業計画に断固
  反対します。



要 請 書

1996年12月24日

国土開発幹線自動車道建設審議会会長
内閣総理大臣   橋本 龍太郎 様

〒081 北海道上川郡新得町字新内西1線125
芳賀 耕一(41才・農業)
TEL/FAX:01566-4-6893
E-Mail:k.haga@ppp.bekkoame.or.jp
http://www.bekkoame.or.jp/~k.haga/

高規格幹線道路夕張清水線について


1.はじめに

 私は、高規格幹線道路夕張清水線に係る環境影響評価準備書について、別紙意見書を北海道開発局に提出した者です。
 ご承知のとおり本路線はシマフクロウやクマゲラなどが生息する豊かな森林地帯を分断するものですが、この道路建設を望んでいるのは実際にはごく一部の道民だけです。今回の審議においては特に「採算性」が論議の焦点になるようですので、特に次の点に留意した慎重な審議をお願いいたします。

2.予測交通量について

 本路線の必要性および採算性を検討するためのデータは「北海道開発局が推計した2010年の予測交通量」(約14,000台/日)が唯一です。
 私は意見書において、この数字が極めて恣意的な数字であることを具体的に検証・指摘しましたが評価書には記載されず、北海道開発局も「計画路線の将来交通量は、建設省が概ね5年毎に実施している「全国道路交通情勢調査」の最新結果(H2年実施)を基礎資料として、現況の交通状況や将来の自動車ネットワーク、人口等の諸経済指標等を考慮して推計しており、現時点において一番信頼性の高い計画交通量と認識しています。」とするだけで、私の指摘に対する反論および計算の根拠は一切記されていません。
 事業計画段階における予測交通量は極めて重要なものですから、予測者の主観や希望的観測を排し、正しい統計手法を用いたものでなければならないことは言うまでもありません。
 この数字を信じて本路線を建設したが、実際には交通量が少なくて大赤字...、これでは国民のコンセンサスが得られる筈がありません。この予測交通量に対して、貴審議会が責任を持てるでしょうか。きちんと裏付けをとったうえで審議をお願いします。

3.整備計画路線への昇格を求める陳情について

 新聞報道によれば、貴審議会に対しては各方面からの陳情と国会議員による政治的圧力があるようです。貴審議会にすれば、本件道路には大多数の道民が期待を寄せていると思われるかも知れませんが、実情は大きく異なっています。
 例えば、新得町においては町議会議員や町理事者を含め、新得町民から本件道路に対する期待の声は聞かれません。むしろ、本件道路の建設により道道新得夕張線の開発が行われなくなることを危惧する人、商売にとって不利益になるため困っている人が多いです。それにもかかわらず新得町が建設促進期成会に名を連ねているのは、近隣市町村に対する義理があるからのようです。
 積極的に推進している(?)北海道にしろ帯広市にしても、きちんとデータを検討したうえで必要と判断している訳ではありません。「国による開発事業が多ければ多いほど北海道は発展する」という古い価値観で物事を考えているに過ぎません。まるで、大して必要でもないのに高価なクリスマスプレゼントをねだる子供のようです。
 地元選出の国会議員によるゴリ押しなどは問題外です。このようなことが公然と行われていては、日本の将来に展望は開けません。
 貴審議会におかれましては、国民全体の利益を考える見地から、政治圧力に屈しない客観的な判断をお願いいたします。

4.清水池田線の赤字について

 高規格幹線道路清水池田線は900億円という投資額にもかかわらず、利用者が日本一少ない高速道路として有名です。「計画段階では、このような状況は予測していなかった」では済まされない大問題です。
 ところが、この赤字路線を何とかするために、全線開通すべきという本末転倒の主張がなされています。確かに、全線開通すればこの区間における赤字額は圧縮されるでしょう。しかし、全体の赤字額で考えれば現在の赤字額の何倍・何十倍となるのです。
 こんなことを繰り返していれば、高速料金制度等に対する国民のコンセンサスは決して得ることができないでしょう。

5.最後に

 蛇足になりますが、新得町には農林省の予算などで作られた農道離着陸空港があります。税金の無駄遣いの象徴として、12月21日の朝日新聞にも大きく取り上げられました。この計画については当初から採算性を問題にする声がありましたが、町費による負担が比較的少なかったため、採算性はほとんど検討されないまま事業が実施されています。
 私は、夕張清水線が農道空港の二の舞になるのではないかと思っています。投資額数千億円という大事業ですから、きちんとしたデータの裏付けが必要なことは言うまでもありません。情報公開法ができたら、まず第一にこれらのデータを開示請求するつもりです。
 貴審議会が新しい時代にふさわしい判断をされることを切望しています。

HAGA's Web Site > 北海道・新得町と情報公開 > 高規格幹線道路夕張清水線