リゾート開発で住民の暮らしはどう変わるか

「ふるさととかち」No.165(1993年2月1日発行)より

リゾート開発で住民の暮らしはどう変わるか

芳賀 耕一  

 「広々とした北海道」「北海道の大自然」に憧れて私は北海道にやって来ました。そして北海道の暮らしはとても気に入っています。ところが本当は北海道にも大自然はほとんど残っていないという事実に、最近ようやく気がつきました。お粗末ながら「広い=大自然」とずっと錯覚していたのです。サホロリゾートの近くに住み、自然が開発で壊されて行く姿に接して、やっと気がついたのですから呑気なものです。
 北海道のあちこちで、残り少ない自然がスキー場やゴルフ場などリゾート開発に狙われ失われて行きます。もちろん開発を推進する側も自然の大切さを強調し「自然と調和のとれた開発」「自然を守り育てる開発」「自然に配慮した開発」…などと説明しますが、自然破壊を伴わない開発の実現を信じる人はわずかでしょう。そこで、もっとも一般的で説得力のあるのが「過疎からの脱却・地域経済の振興のためには多少の自然破壊はやむを得ない」という考え方です。
 ところで過疎とは何でしょう。人口が少ないことは良くないことで、人口が多くなれば人々は幸せに暮らせるのでしょうか。私は、ここに大きな間違いがあると思います。人が多かろうが少なかろうが、その土地に住む人々が幸せに暮らせる事が大切なのです。そんな土地であれば若者も定着し人口が増えるかも知れませんが、それはあくまでも結果です。サホロリゾートという職場があっても、新得育ちの若者で就職を希望する者はわずかです。「人口が少ない=過疎」と考える価値観を離れなければ、若者は人口の多い都市へと流れ「過疎からの脱却」は永遠の課題になるでしょう。そしてこの一年半の出来事を振り返ると、自分の意見を自由に発言できない町の雰囲気が、若者が流出する一番大きな理由であると思えてなりません。
 それでは地域経済の振興の方はどうでしょう。リゾート開発は事業者による施設建設の他にも自治体が公共予算をつぎ込んで様々な施設や道路等を作りますから土木建設業者が潤う事は間違いありません。現在の政治が利権を軸に動いていることを思えば開発に伴う利権は重大です。しかしこの事を以って地域経済が振興すると言っていいのでしょうか。例えば新得町には三十八億円かけて新得市街・サホロリゾート・トムラ登山学校レイクインをサイクリングロードで結ぶ案があります。これは三十八億円の仕事を作りますが、こんな無駄使いを地域経済の振興と言えるかどうか…。新得町の財政はサホロリゾート誘致後、総合体育館・狩勝高原水道施設・新得酒造公社・農道空港・トムラ登山学校レイクイン・東大雪荘など観光に絡んだ支出が極端に突出したものになっています。これらは一部の者には利益をもたらしますが、生活関連予算・福祉予算・地場産業振興予算が減額される結果となります。町政に対する町民の不満は、新得酒造公社の不正経理と大幅赤字、それに対する町の財政負担でかなり表面化してきています。
 リゾート誘致による地場産業への影響はどうでしょう。国勢調査によれば一九八五年から一九九〇年に新得町の農林業人口は二〇%減少し商業人口も一一%減少しました。これらはどちらも十勝管内二〇市町村中二番目の減少率となっています。農林業・地元小売業の置かれた経営状況が厳しいことは確かですが、リゾート誘致による就業者の転職や観光中心の町政が地場産業の衰退に拍車をかけたと言えるでしょう。ちょっと意外なのは、リゾート誘致による大きな経済波及効果が期待されていた商業ですが、実際は極端な低マージンのため、ほとんど振興に結びつきませんでした。
 経済波及効果については複雑で、その人の立場により受ける利益が様々です。開発は確かに一部の人間に利益をもたらしますが、圧倒的多数の住民は利益を受けず迷惑を被るばかりでしょう。まして一部の人間の利益のために、お金には換算できない自然という共有財産が壊されると思うと黙っていられず、私は仲間達と様々な活動をしてきました。私たちの町が生活・福祉・地場産業の充実した町民主役の町になる日を夢見て、今後も活動を続けるつもりです。

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