合成洗剤と共に浸透するアムウェイ商法

文章中の成分表示は1990年当時のもので、現在は異なります。

「ふるさととかち」No.150(1990年5月1日発行)より

合成洗剤と共に浸透するアムウェイ商法

芳賀 耕一  

たかが洗剤の話と思うでしょうが

 私は今まで粉せっけんを利用してきたし他人にも勧めてきました。ところがです。やはり粉せっけんを愛用している知人が「環境を破壊しないし手も荒れないらしい」といってアムウェイという会社の洗剤を見せてくれたのです。愕然としました。合成洗剤じゃないか。
 でも冷静になると私は洗剤についての知識は皆無に等しいのです。よくわからないので洗剤に関する本を借りてきたり、あちこちに電話をかけたりしました。以前せっけんを勧めてくれた人にも電話してみたら、今はアムウェイ製品を愛用していました。驚きましたが、その人は環境に対する影響についてはアムウェイから資料を取り寄せ、ずいぶん検討したそうです。そう言われると自信がぐらつきます。工業化学もそれなりに研究が進んでいるから無公害の合成洗剤ができたのかも知れない。
 そんなわけで合成洗剤とせっけん、そしてアムウェイについて調べてみました。

アムウェイを知っていますか?

 アムウェイ社はアメリカで生まれ世界各国に広がった会社ですが、洗剤のほかに栄養補助食品・調理器具・化粧品などを独特の商法で販売しています。ディストリビューター(販売員)は自分の知人に商品を売り、ディストリビューターになるよう勧誘もします。ディストリビューターになるのに資金はほとんど必要ないので自分の都合にあわせて気軽にビジネスできるのです。主婦にとってはちょっとしたアルバイトになるし、勤めをやめて驚くほどの高収入を得ている人もいるそうです。高収入の自営業は大きな魅力です。
 アムウェイ・ビジネスでは自分の売り上げだけでなく自分が広げた販売網の売り上げに対してもボーナスが支払われるので、同志として励まし合うディストリビューター達は、あたかも宗教のような独特な熱気に包まれていると聞きました。

アムウェイはこうして広がっている

 アムウェイは、今まで粉せっけんを使っていた「安全性に関心ある人」の間にも、どんどん広がっています。どうしてでしょう。安全性に関心があっても、たくさんの商品をひとつひとつ検討するのは大変なことです。ですから、たとえば「生協が売っているのだから粉せっけんはいいものだろう」というように、信用だけに頼ることになります。もし身近な人に「アムウェイはいいよ」と言われたら「きっといいんだな」と信じてしまうのも、当然の成行きかもしれません。
 アムウェイ製品については、いろいろな説明を聞きました。「合成洗剤じゃないよ」「ヤシ油から作るんだって」「紙から作るって聞いたけど」「微生物できれいに分解されるんだって」「手荒れがないんだって」「金魚も死なないそうよ」「直売方式だから安いんだよ」「利益よりも社会のことを考える会社なんだって」…すべて間違いでした。
 その間違いも売るためのウソというよりアムウェイ商品に対する信仰から生まれた誤解ですから信用されるのです。アムウェイ社によると「ディストリビューターが間違った商品知識で販売することは不本意だし、とても困ること」なのだそうです。アムウェイ社に責任を問えない仕組みは巧妙で、薬まがいの栄養補助食品の販売にはさらに大きな効果がありそうです。「アムウェイは『デマ』と共に売り上げを伸ばした」といっても過言ではないでしょう。

アムウェイの洗剤はどこが違うの?

 まず成分表示を見てみましょう。『ディッシュ・ドロップ』の主成分・LASは合成界面活性剤の中でも「特に安全性に問題がある」と言われています。『ディッシュ・ドロップ』は『ママレモン』とよく似た「洗浄力は強くても、不安度の高い、手にもやさしくない洗剤」です。
 『S―A―8』は泡立ちの少ない界面活性剤を使い「クリーンなイメージ」を強調しているようですが、ごく一般的な洗濯用合成洗剤です。

アムウェイ『ディッシュ・ドロップ』(台所用合成洗剤)
界面活性剤(45%)
  直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(略称 LAS)
  アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム
  脂肪酸アルカノールアミド

ライオン『ママレモン』(台所用合成洗剤)
界面活性剤(27%)
  直鎖アルキルベンゼン系
  アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム

花王『ファミリーフレッシュ』(台所用合成洗剤)
界面活性剤(27%)
  アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム
  脂肪酸アルカノールアミド

アムウェイ『S−A−8』(洗濯用合成洗剤)
界面活性剤(14.2%)
  ポリオキシエチレンアルキルエーテル
  アルキルアンモニウムクロライド
けい酸塩
炭酸塩
蛍光剤配合
酵素配合

花王『アタック』(洗濯用合成洗剤)
界面活性剤(42%)
  直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(略称 LAS)
  高級アルコール系(陰イオン)
  脂肪酸ナトリウム(純せっけん分)
  ポリオキシエチレンアルキルエーテル
アルミノけい酸塩
けい酸塩
蛍光剤配合
酵素配合

『ディッシュ・ドロップ』は『野菜や果物も洗えます』??

 LASなどの合成界面活性剤は誤飲による急性毒性の他、皮膚障害・肝臓障害・催奇形性・発ガン補助作用などの慢性毒性、そして他の化学物質の吸収を促進する作用などが指摘されています。
 他の物質と反応して新しい毒性物質を作ったり、単独なら生体吸収されないはずの物質でも界面活性剤と一緒になると吸収されてしまう、いわゆる『複合汚染』についても問題にされているのです。
 それでもおきまりの「通例の使用方法では問題ない」はずというのが厚生省や洗剤メーカーです。
 合成界面活性剤は皮膚からも吸収されるし食器にも残留しますが、野菜や果物へは浸透していきます。特に鮮度の悪いものや傷のあるものに対しては顕著です。浸透してしまったら、いくらすすいでも取れません。
 『ディッシュ・ドロップ』がなぜ『野菜・果物・食器・調理用具用』なのか。日本アムウェイの話です。

 「実はアムウェイでは、台所用洗剤を昨年まで食器洗い用として販売していました。でも、お客様の中には『どうしても野菜や果物を洗いたい』とおっしゃる方もいますし『他のメーカーの台所用洗剤は野菜や果物も洗えるのに、アムウェイのものが洗えないというのは毒性が強いからではないか』という質問も寄せられますので、昨年、若干の成分改良と共に表示を変更しました」。

 合成洗剤で洗う利点などまったくないのに『野菜・果物用』と表示するのは『命を大切にしない姿勢』の表示でもあります。

アムウェイは手荒れしないの?

 洗剤による手荒れの原因はいろいろあります。脱脂作用によるもの、アルカリによるもの、香料に対するアレルギーなどです。
 アムウェイの洗剤は手荒れしないという話を耳にしますが本当でしょうか。『ディッシュ・ドロップ』の主成分・LASは手荒れの大きな原因になるので、最近の台所用洗剤ではあまり使われていません。「やはり適切な使用方法を守らないと手荒れは防げない」事を日本アムウェイにも確認しました。手荒れしにくくなったという人は「スポンジに原液をふりかけて洗う」使い方をやめたからではないでしょうか。
 手荒れに悩む給食センターなどで、せっけんに切り替えたところが多いと聞きます。もちろん食事をする子供達などへの影響も考えたからでしょう。
 『台所用せっけん』という表示があるものが、一番安心して使えます。液体のものと固形のものがありますが、固形の方が油汚れに強いし経済的です。あなたも試してみませんか?

合成洗剤は環境を汚します

 1968年頃までの日本では合成界面活性剤の主流はABS(アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム)でした。ところがABSは環境中でほとんど分解しないため、川や海、そして飲み水までが汚染され大問題になりました。そのため、ABSの一種で、ある程度は微生物によって分解されるLAS(直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム)が使われるようになったのです。
 現在、合成界面活性剤はLASの他にも様々な種類のものが使われていますが、一応法律で規制されていて「水温20度においてメチレンブルー活性物質が8日間で85%以上分解」しなくてはいけないそうです。また、JIS規格適合商品は90%以上とされています。これでは何の事だかよくわかりませんが、グラフ(日本消費者連盟発行「合成洗剤」より)を見てください。

メチレンブルー法によるABS、LAS、石けんの分解率の比較

 せっけんは分子構造が天然油脂に似ているので、微生物により一日で完全に分解されます。LASの方は、鎖状の分子を微生物が切断していくのですが、時間がかかるし、分解できない破片も残ります。海の生き物やそれを食べるヒトなどに対してどのような影響があるのか解らず不安ですが、法律上は「界面活性剤としての働きがなくなればまあいいだろう」という事のようです。
 また、水温10度の時のグラフもあるとよかったのですが、低い温度での分解は極端に悪くなります。
 さてアムウェイの洗剤です。『ディッシュ・ドロップ』の主成分はLASですから、グラフの通りです。『S―A―8』については、日本アムウェイに聞いてみました。

 「『S―A―8』の界面活性剤なのですが、『生分解します』と書いてあるのはやっぱりLASなんかと比べて生分解性がすぐれているのでしょうか」
 「他の商品に比べてというようにはご案内しておりませんし、そういう事ではございません」
 「といいますと、LASとほぼ同じくらいと考えたらいいのでしょうか」
 「そういう事でございます。法律やJIS規格に従っているということでございます」

 「『生分解します』という表示はディストリビューターや消費者に対して誤解をうむ原因になっているのでやめて欲しい」という申し入れに対しては、「検討してみます」ということですが、不当表示にはならないそうで困ったものです。

『輝く白さ』と『自然な白さ』

 蛍光剤で染めあげた『輝く白さ』。洗濯用合成洗剤はその洗浄力よりも蛍光剤の威力で多くの人の心をつかんでいます。蛍光剤は安全性に疑問があるため、おしめ・フキン・ガーゼなどの製品に対しては使用することが規制されています。また川を流れ海に入った蛍光剤は一体どうなるのでしょう。
 たべものに合成着色料を入れ、洗剤に蛍光剤を入れる。本当にくやしいのだけれども、やはり見かけが大切なのですね。粉せっけんは蛍光剤など入れないからだめですか。

アムウェイ製品の洗浄力について

 使ったことがないのでわかりません。私の家では飲み水は地下水ですが、生活排水を地下浸透させています。合成洗剤を試しに使うことはできないのです。どこでやるにしても、排水の事を考えれば気が進まないのですが機会があれば実験してみようと思っています。
 でも「洗浄力はほどほどがよい」というのが私の基本的な考えです。身の回りをきれいにすることばかりに気を取られていて、いつの間にか地球を汚してしまうのでは困りますから。

日本アムウェイ・その販売戦略

 洗濯用合成洗剤『S―A―8』の小売価格は1kg・1600円(40回分)です。一般の合成洗剤や粉せっけんは一回分が10円前後ですからおよそ4倍に価格設定されています。台所用合成洗剤『ディッシュ・ドロップ』は1000ml・1850円。ママレモンが800ml・330円、ファミリーフレッシュが600ml・168円とすると、濃度を考えても2.7倍、4.0倍という価格です。ところがその高価格こそがアムウェイ商品に対する信頼と満足感を生み出します。そしてディストリビューターに充分な報酬を与えても、アムウェイ社は莫大な利益をあげられるのです。
 『アムウェイの世界』という本に書かれている数字から計算すると、1000円の商品代金は、その中から400円がディストリビューター(販売員)に還元されます。商品の仕入れ・あらゆる経費・社長の給与まですべてをひっくるめても400円なので、200円は会社の丸儲け(所得)です。この本の著者は「アムウェイが日本に上陸して、わずか10年」で「奇跡の成功」「驚異の発展」と賞賛していますが「1988年度の申告所得金額は262億円、ちなみに花王は355億円、ライオンは34億円」だそうです。日本アムウェイは100%外資ですから貿易摩擦の解消にはいいかも知れません。
 蛇足ながらアムウェイはとても良心的なので『本製品に万一ご不満の節は、代金をお返しします』ことを書き添えておきます。

『せっけん』を使ってみませんか?

 「せっけんは洗浄力が劣る」と思い込んでいる方、こんな使い方で、もう一度ためしてみてください。
 洗濯物も地球も、きっときれいになりますから。



参考文献
  『アムウェイの世界』     篠原 勲 著     東洋経済新報社
  『台所用品の不安とつきあう法』増尾 清 著     農文協
  『日本の洗剤・その総点検』  柳澤文正 著     績文堂
  『恐い洗剤・知らない使い方』 内藤裕史 著     青春出版社
  『あぶない無リン洗剤』    日本消費者連盟 編著 三一書房
  『合成洗剤は地球を汚す』   石川貞二/鈴木紀雄  日本消費者連盟
  『自然食通信』第17号・第31号            自然食通信社
     特集 洗う・・・石鹸・洗剤をこえて
     特集 流す水は巡りめぐって食べる水
  『暮しの手帖』1988年4・5月号           暮しの手帖社
     「みなさん水を汚さないで」
  『化学 B』(高校の教科書)            中教出版
  『総合・家庭科事典』   日本家庭科教育学会 編著 同文書院

話を聞いた人
  日本アムウェイ株式会社・消費者相談課
  アムウェイ・ディストリビューター
  旭川・しのはら石鹸
  日本消費者連盟
  婦人民主クラブ
  暮しの手帖社
  美唄消費者協会・伊藤みえ子さん
  帯広・友の会の谷口さん

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